卒研発表会が行われました!

当研究室からは近藤君,中村君,山口君が発表しました.

「成層圏気球の姿勢擾乱を模擬する地上実験装置の開発」近藤大宙

概要: 成層圏気球のフライトシステムは気球,ゴンドラ,吊り紐で構成され,観測機器は下端のゴンドラに設置されている.巨大な気球に対してゴンドラは小さく,長い吊り紐の端にあることから,小さな外力で容易に鉛直軸まわりの回転振動を生じる.この回転振動は観測において外乱となるため,ゴンドラに搭載する姿勢制御装置により減衰,補償されなければならない.本研究では,ゴンドラの姿勢制御装置の性能を地上試験で正しく評価するため,気球の姿勢擾乱によるゴンドラのふるまいを再現する地上実験装置を開発することを目的とする.
 気球からの外乱によるゴンドラのふるまいを地上で再現するために実験装置を開発した.1 t クレーンからワイヤーでゴンドラを吊るし,クレーンとワイヤーの間をモーターで回す.モータの回転は 1 s周期で任意の角速度に制御した.過去のJAXA気球実験のフライトデータの解析から,地上実験で目標とするゴンドラの運動を定義した.実験によりモータからの入力とゴンドラの運動の関係を求め,目標となるゴンドラの運動のほか,任意の角速度外乱を与えることができるようになった.

「金沢大学衛星「こよう」の電源系フライトデータ解析」中村駿介

概要:金沢大学衛星「こよう」は 2023 年 12 月に打ち上げられた 50kg 級超小型人工衛星である.「こよう」の電源系は,18 直列 7 並列の太陽電池セルアレイ,3 並列 8 直列の2 次リチウム電池, および電源制御器 (PCU) で構成されている.「こよう」打ち上げ前の地上試験では,室内のため太陽電池による発電ができないなど,性能試験時に環境による制約があった.本研究では,「こよう」の軌道上データと地上試験結果,数値シミュレーションを用いて電源系設計を評価することを目的とする.
 本研究では今まで不明であったこよう搭載太陽電池セルの発電性能に温度が与える影響について,室内実験に基づいて評価した.これによりこようフライトデータに示される温度範囲で最大発電電力に顕著な温度依存性は見られなかったことから,温度による発電量の変化を無視して軌道上シミュレーションを行った.このシミュレーションで充放電サイクルにおけるバッテリ電圧の変動幅,長期トレンドがおおよそ一致し,数値シミュレーションで実際の電源系のふるまいを再現できた.

「超小型衛星用リアクションホイールの研究開発」山口太暉

概要:人工衛星等の宇宙機は,宇宙空間で姿勢を変更したり維持するため姿勢制御を行う.そのための装置の一つにリアクションホイール(RW)がある.RWはホイールの角運動量を変化させるときの反作用トルクを衛星の姿勢制御に用いる.近年の超小型衛星の発展にともない,小型かつ軽量なRWが求められるようになった.本研究では超小型衛星用のRWを試作し,性能評価を行う.
 開発したRWをはホイール一体型ブラシレスモータとし,U,V,W相の各コイルはガラスエポキシ基板に形成した.永久磁石はホイールに固定し,1ペアの磁石を設置した.駆動電流制御は市販のマイコンキットを用いた.最大回転数4489 rpm,最大角運動量1.337 mNmsを達成した.本RWは磁石を増やすことにより電力を増やさずに性能の向上を見込める.また,ホイールの位相に応じた電流制御により,効率を向上させられる可能性がある.今後電力効率を上げ,消費電力を減らす電流制御の最適化に取り組む.

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