人工衛星,成層圏気球ゴンドラともに,姿勢制御システムやミッション機器だけでは,動作させることができません.1機の宇宙機はいくつものサブシステムで構成され,それぞれの機械,電子機器,ソフトウェアのすべてがそろって初めて全体が機能します.我々が参加するプロジェクトで必要であれば,宇宙機の姿勢推定や制御に直接関係しないサブシステムの開発や設計,機能のシミュレーションや評価を行います.
Contents
宇宙機のシステム
宇宙機,特に人工衛星は一般的に以下のような多くの要素で構成されています.
バス系
姿勢系
- 姿勢センサ(太陽センサ,磁場センサ,角速度センサ,恒星センサ,地球センサ)
- 姿勢制御(リアクションホイール,コントロールモーメントジャイロ,磁気トルカ,コールドガススラスタ)
人工衛星が現在向いている方向を計算する.
目標方向との誤差が0になるように人工衛星の向きを変更する.
姿勢系
- 姿勢センサ(太陽センサ,磁場センサ,角速度センサ,恒星センサ,地球センサ)
- 姿勢制御(リアクションホイール,コントロールモーメントジャイロ,磁気トルカ,コールドガススラスタ)
人工衛星が現在向いている方向を計算する.
目標方向との誤差が0になるように人工衛星の向きを変更する.
データハンドリング系
- オンボードコンピュータ
- データ保存メモリ
- ハーネス
人工衛星の状態を監視し,発生したデータを保存する.
デバイスとデバイスを仲介して,衛星全体が目的の機能を実現できるように制御する.
地上から送られたコマンドを解釈して,それに応じた動作を行い,地上に送るデータを作る.
通信系
- コマンド受信器
- テレメトリ送信器
- 無線アンテナ
地上からの指令(コマンド)を受け取り,地上に衛星が持つデータを送る衛星側無線局.
電源系
- 太陽電池(パドル)
- 充電池(NiMH,Li-ion)
- 電源制御器
太陽光を受けて電力を発生し,すべての機器に分配する.
余った電力を電池に貯め,太陽が地球の陰にかくれて発電できない間,電力を供給する.
軌道系
- GPS受信器
衛星の現在位置を計測する.
開発段階では,数値シミュレーションにより衛星の軌道の各種パラメータを設計検討し,他のサブシステムに動作条件(発電可能期間,地上との通信可能時間,ミッション実施可能期間など)を与える
推進系
- ガスジェットスラスタ
- 推進剤タンク
- 配管,電磁弁
衛星の軌道を目的に応じて変化させる.(小型衛星では搭載しないものが多い)
構造系
- 衛星本体
- 展開構造物(太陽電池パドル,アンテナなど)
- ロケットインターフェース
衛星に搭載するデバイスを互いに固定し,ロケットの振動衝撃に耐えて軌道に運ぶ.
ロケット内ではスペースの都合でたたまなければいけない大型構造を軌道上で広げる.
ミッション系
ミッションを実際に行うための機器.ミッションによりさまざま.
地上系
通信系
- コマンド送信器
- テレメトリ受信器
- アンテナ
衛星へ指令(コマンド)を送り,衛星からデータを受け取る地上側無線局.
データ解析系
- コマンド生成ソフトウェア
- テレメトリ受信ソフトウェア (Quick Look)
- テレメトリ保存データベース
衛星から受け取ったデータを人が見て理解できるように変換し,見やすく画面に表示する.
受け取ったデータを蓄積し,必要に応じて必要なデータを呼び出せるようにする.
運用計画に沿って衛星に送るコマンドを生成する.
私たちの取り組み
金大衛星こようの電源系

金大衛星こようの開発チームの一員として,電源系を担当(※注)しています.
電源系は太陽電池パネル,リチウムイオン電池,電源制御ユニット,スイッチボックス等からなり,フライトシステムに電力を供給します.打ち上げられてしまうと二度と触れることができないのが人工衛星です.こようが打ち上げられる前に電池の特性を実験を通して確かめたり,試験を通して得られた消費電力を太陽電池やバッテリが賄えることを数値シミュレーションで確かめています.
また,電池は「なまもの」です.適切に保存管理しなければ,徐々に傷んでいきます.フライトまで電池が健全であるように,補充電や電池容量のチェックなどを行います.
(※注:ARC-SATでは必ずしも所属研究室によって担当が決まるわけではありません)
FUJIN2のサブシステムの制作
現実世界の中で動く機器の状態を把握するためには,電圧,電流,温度などのアナログ計測も必要です.計測結果はオンボードコンピュータで処理したり,テレメトリとして地上に送信します.そのためアナログをデジタルに変換する必要があり,AD変換といいます.FUJIN2では,アナログ計測を行うためにRaspberry Pi(ラズパイ)ベースのアナログ収集システムを制作しました.これは別のサブシステムのために開発したシステムの設計を流用したもので,フライト用の電子基板を設計し,基板を収めるケースを3Dプリンタを駆使して製作しました.
また,GPS姿勢ロガーの開発経験を流用して,一般のGPS受信器では動作範囲外になる成層圏でも測位できるGPS受信機ユニットの開発も担当しています.